【展覧会レポ】「コルビジェ展」で彼の建築空間を探る。「クリムト展」で妖艶な世界観に浸る。
先週の日曜日は珍しく午前に都内で用事。
お昼には予定を終え、せっかく都内まで来たのだから.....とその足で上野に向かう。お目当ては「クリムト展」と「コルビジェ展」だ。
【ル・コルビュジェ 絵画から建築へ - ピュリズムの時代】
概要
20世紀建築の巨匠ル・コルビュジエ(1887-1965)が設計した国立西洋美術館本館は、2016年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。開館60周年を記念して開催される本展は、若きシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)が故郷のスイスを離れ、芸術の中心地パリで「ピュリスム(純粋主義)」の運動を推進した時代に焦点をあて、絵画、建築、都市計画、出版、インテリア・デザインなど多方面にわたった約10年間の活動を振り返ります。
第一次大戦の終結直後の1918年末、ジャンヌレと画家アメデ・オザンファンは、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の芸術を唱えるピュリスムの運動を始めました。そして、絵画制作に取り組みながら新しい建築の創造をめざしたジャンヌレは、1920年代パリの美術界の先端を行く芸術家たちとの交流から大きな糧を得て、近代建築の旗手「ル・コルビュジエ」へと生まれ変わります。
本展はル・コルビュジエと彼の友人たちの美術作品約100点に、建築模型、出版物、映像など多数の資料を加えて構成されます。ル・コルビュジエが世に出た時代の精神を、彼自身が作り出した世界遺産建築の中で体感できる、またとない機会となるでしょう。
国立西洋美術館「コルビュジェ展」特設サイトより抜粋
感想
ピュリズム運動に参加しながら、装飾芸術を廃し、機能主義を追求、から自然との調和へとテーマが移っていったコルビジェの変遷が、彼自身による絵画と建築を反復することにより、理解できるような展示であった。
何より彼自身が設計した建物で彼の思想に触れられることができたのがとてもよい。建築を学ぶならぜ見に行くべきな展覧会だ。
【クリムト展 ウィーンと日本1900】
概要
19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト(1862-1918)。華やかな装飾性と世紀末的な官能性をあわせもつその作品は、いまなお圧倒的な人気を誇ります。没後100年を記念する本展覧会では、初期の自然主義的な作品から、分離派結成後の黄金様式の時代の代表作、甘美な女性像や数多く手掛けた風景画まで、日本では過去最多となる25点以上の油彩画を紹介します。ウィーンの分離派会館を飾る壁画の精巧な複製による再現展示のほか、同時代のウィーンで活動した画家たちの作品や、クリムトが影響を受けた日本の美術品などもあわせ、ウィーン世紀末美術の精華をご覧ください。
(東京都美術館 展示会情報より抜粋)
気に入った作品
・ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実) (1899)
チケットのメインビジュアルにもなっている手鏡を見てこちらをじっと見つめる女性の全体を描いた非常に大きな絵。女性の背景に映る、川の流れような動きを感じさせる青と、静的で、かつ重厚感を感じる額縁のような金の対比がきれいにマッチしていて、とても美しかった。
・ベートーヴェン・フリーズ(1901-02)
ベートーヴェン第九交響曲に基づいて描かれた壁画作品。絵画の中に悪魔、英雄、貧しいもの富んだものなど様々な人物がいて、ストーリーを感じさせる絵となっていた。
・《医学》のための習作(1897 - 98)
一目見て、美しいと感じた。全体的に赤紫みがかった油絵がスポットライトに照らされてキラキラと光っている感じもとても神秘的であり、描かれた人々の荒々しい感じが伝わってきた。やはり絵は実物でみないとな・・・・。ウィーン大学からの依頼で描いた絵なのに、大学側から抗議されて、最後は自分で引き取ったというエピソードも好き。
・亡き息子オットー・ツィンマーマンの肖像(1902)
生後まもなくして亡くなってしまった息子を、悲しみに暮れながらがチョークで描いた肖像。チョークだけでここまで繊細に、儚げに、死を描けるのかと感動した。隣には実際に亡くなった息子の葬儀の写真もあり、クリムトの絶望が写真と絵で伝わってきた。
お土産
クリムトの絵画自体がグッズデザインとマッチしていて展開しやすいからか、高クオリティなお土産が非常に充実していた。あまり普段はしないのだけどTシャツやらハンカチに手を出しそうになったものも、現金をほとんど持ち合わせていなかったので泣く泣く断念。
今回の展覧会で一番好きな「《医学》のための習作」ポストカードと「ベートーヴェン・フリーズ - 歓喜の歌」が表紙になっているノートを購入。
感想
もっとも有名な平面的で図案的なモノから、初期の画家として働いていた時の肖像画などまで幅広い作品を見ることのできる展示会。また金箔や真珠母貝を用いた煌びやで豊かな装飾が、クリムトの描くどこか血が通っていないような暗い人物をより際立たせており、展示空間全体も暗く、彼の世界観を表しているようだった。
日曜日ということもありとにかく人が多く作品をあまりじっくり見ることができなかったのが難点であったものの、全体を通して非常に満足できる展覧会だった。
2つもの展示会にふれたよい休日だった。やはり誰かの思想にふれるのは楽しい。どんなに忙しくてもこういう時間はもっておこう。